君に幸せの唄を奏でよう。




そこには、浩ちゃんの家の大きな豪邸が建っていた。家は3階で広い庭付き。しかも、地下室もある。

外見は、ヨーロッパにでもありそうで、色は白で統一で綺麗。車庫も門も立派で、一般の家とは、比べ物にならない。

浩ちゃんの家に来る度に、何度ここに住みたいと思ったことか。

「いいな、お金--」
「このバカッ!」

“お金持ち”と言いかけそうになった途端、亮太が慌てて口を押さえてくれた。

しまったッ!禁句を言ってしまった。

「お前忘れたのか?!禁句だろッ!」
「忘れてたわけじゃないけど、勝手に口が動いたのよッ!」

あたし達は、浩ちゃんに気付かれないように小声で話す。だけど、後ろから黒いオーラを感じた。あたし達は、恐る恐る後ろに振り向く。

案の定、浩ちゃんは氷のように冷たい目をしてあたし達を見つめていた。

沈黙でも、ひしひしと何かが伝わってくる。

ど、どうしよう……。考えないと……。

「えっ、あ、さ、さすがお金をたくさん持っているなぁ~って、思って」
「アホかッ!!もう少し上手い言い訳を考えろッ!!」

亮太が怒りながら言ってきた。

「だって、他に思いつかなかったのよっ」
「浩ちゃん!許してあげてっ!」

佳奈は、浩ちゃんを必死に止めてた。

「浩ちゃん、ごめんっ」

あたしは、謝った。

「…もういいよ」
「「えっ?」」

あたしは、もっと怒られると思っていたのに怒られなかったので、ビックリした。

「早く家に入ろ」

浩ちゃんは、そう言って玄関に向かった。あたし達も浩ちゃんの後を着いていく。

あたしは、浩ちゃんに酷い事をした。浩ちゃんは“お金持ち”って言われるのをすごく嫌がる。

初めて会った時も“お金持ち”って言って怒られた。

最初、何で怒ったのか分からなくて、どうしても理由を知りたくて亮太にこっそり聞いた。

亮太は、罰が悪そうな顔をしていたけど、浩ちゃんには内緒で教えてくれた。