君に幸せの唄を奏でよう。




「お前、文化祭でライブしてみないか?」
「文化祭?」
「あぁ。毎年、体育館でライブをやるんだ。お前は、まだ1年だから店を出したりしないし」

そんなのがあったなんて、知らなかった。でも、凄く楽しそう。

「それにお前達は、バンドもしてるから宣伝にもなると思うぞ」

まるで先生は、うまい話を持ちかけるセールスマンの様に、誘いをかける。

なるほど…。確かに。学校で、ライブをやれば知名度も上がる。

「少し考えてもいいですか?篠原くん達にも相談したいので」

後で、みんなに聞いてみよ。

「あぁ、大丈夫だ。……高橋、少し聞いてもいいか?」

突然、先生が何か考え事をしながら、あたしに訪ねた。

「文化祭のライブは、この学校の生徒でないと参加できない。でも、お前は“篠原達に相談する”って言った。つまり、残りのメンバーは、この学校に居るのか?」

………しまった!自分で、墓穴掘っちゃったッ!

「…………はい」

あたしのバカッ!!なに同じ事を繰り返ししてるのよッ!

「ほぅ。誰だ?」

また、食いついてきたッ!

でも、言い逃れは出来ない…。しかも、自分からばらしちゃったし。

「………相原さんと岡田くんです」

2人共ごめん………。

高橋 唄希、1番知られたくない人に2度も失態を起こしました。

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「本当に、お前には学習能力がないな」

鈴木先生のやりとりを一通り説明し終わると、亮太は呆れた顔をして怒ってくる。

学校も終わり、あたし達はライブの練習をするため、浩ちゃんの家に向かっている途中。

「でも、仕方ないよ。私は、気にしてないよ」
「…佳奈」

何て優しい子なのっ!

「まぁ、自分で墓穴掘ったから仕方ないよ。僕も気にしてないし」

浩ちゃん…今、あたしが気にしているのをさりげなく言ったよね?

浩ちゃんの真実のお告げが、あたしの胸にグサッと深く突き刺さる。

それに、浩ちゃんには何も言い返せない。だって、鈴木先生同様、頭が上がらない。