「奏、本当に悪かった!だから許してくれ!」

宮木は、両手を合わせながら必死に謝る。

「はぁ……。今回は、見逃してやるよ」

なんだか、俺が宮木をイジメているような気分になって、思わずため息が出る。

「本当か!?」と、 宮木は嬉しそうな表情をした。だけど――。

「その代わり、B定食を3日間奢るのと、しばらく俺の言うこと聞けよ」

俺は、飛ばされた米粒をふきんで取りながら条件を伝える。

「そんなぁ~!」と言いながら、宮木はがっかりとして肩を落とす。

「ハハハッ!それは、いいな」

先輩は、宮木の肩に手を置きながら爆笑する。

「笑わないで下さいよ、淳司さん~~」

先輩を見て、宮木はさらにがっかりとした。

「じゃあ、ふきんを水で濡らして持ってきてくれ」

俺は、米粒が付いたふきんを宮木に渡す。

「………ウッス」

宮木は不満足そうに、ふきんを受け取り手洗い場に行った。

「橘、あんまりあいつをいじめるなよ」

先輩は、手洗い場に行く宮木を見ながら言う。

「いいんですよ。あいつMだから」
「ハハハッ!でも、驚いたな。お前が、友達をつくっていたとわな」

先輩は、嬉しそうな表情で俺を見る。

「……別につくった訳じゃないです。あいつが、勝手に話しかけてくるんです。しかも、名前も勝手に呼びやがるし」

「いい事じゃないか。俺は、いい奴だと思うけど?」

先輩にそう言われ、俺は複雑な気持ちになる。

「俺、ああゆうタイプ苦手です。どう話したらいいか……」

「橘、お前はお前で居ればいいんだよ」

先輩は、ニカッと笑いながら言う。

「あいつは、お前の事を分かってくれてるから、一緒に居るんだぞ。気楽にいけよ」

先輩が、俺の肩に手を置きながら言う。

「ありがとうございます」
「悩みがあったら、聞いてやる。いつでも相談してこいよ」
「はい」

高校の時から世話になって、今も俺に気にかけてくれてる。本当に感謝しきれない。

「じゃあ、俺は用があるから行くな。成瀬にもよろしくな」

先輩は、食堂を出ていった。

本当、先輩には敵わないな。俺は、心のどこかでホッとした。

「奏~!悪い悪い。遅くなった!」

宮木が、布巾を持って俺の方にむかってきた。

「遅い」

「悪い」と、宮木は謝る。俺は宮木からふきんを受け取り、パンツを軽く拭く。

「さっさと食べないと、午後からの講義間に間に合わないぞ」
「お、おう」

宮木も残っているカレーを食べ始める。

「米粒飛ばすなよ」

宮木に、釘を打つように睨む。

「モグモグ…ウッス!」

宮木は、口を押さえながら言う。



――――



「で、つまりここは…」

今は、午後の講義中。相変わらず授業はくだらない。まだ入学してから間もない。あれだけ、暇だった高校の授業が懐かしく思える。

隣では、宮木が気持ち良さそうに寝ている。相変わらずよく眠れるな……と、宮木に関心をした。

『あたしの歌が不愉快だって、もういっぺん言ってみなさいよッ!!』

また突然と、あの女の子の声が頭の中を駆け巡る。

何故、俺はこんなにもあの女の子の言葉に気にしているんだ?その原因を探る為に、昨日の出来事を思い出す。