だけど、その気持ちと同じぐらい、もう一つの気持ちが強くなった。


音楽だけじゃ足りない。高橋の側で、一緒に笑ったり泣いたりしたいんだ。その気持ちに気付いたキッカケが、佐藤と高橋を見たときだ。


佐藤が高橋の手首を掴んでいるのを見て、心に黒い靄が広がって佐藤に怒りのようなものを覚えた。


いや、嫉妬してしまったんだ。


だから俺は、躊躇わずに高橋を自分の元へ強引に寄せた。それでも手を離さなかった佐藤に苛立ちと嫉妬は消えず、口が勝手に動いて佐藤を追い詰めていた。


気がついた時には、高橋と手を繋いでいた。なんの躊躇いもなく触れた。


俺が彼氏じゃないのは分かっている。それでも、高橋が他の男と一緒に居るのが嫌だったんだ。



俺は、高橋の事が----。



「ご乗車ありがとうございました」


バス内のアナウンスを聞いて、はっと現実に戻る。目的地についたバスは、バシュっとドアを開けて待っていた。


バスから降りると、昼間と違って冷たい風が身体を包み込んだ。あたりは、虫の鳴き声が鳴り響く。


ふと空を見上げると、どこまでも星が散らばっていて、星一つ一つの輝きを強く感じた。


いつもと変わらない星空なのに、初めて星空を見ている様な不思議な感覚になった―――。