あたし達は、バス停に向かった。バス停に着くと、あたし達以外に、待っている人は居なくて、二人でベンチに座って待つことにした。
風がとても気持ちよくて、あたし達の髪をなびかせる。向日葵も、ゆらゆらと風に揺られている。何となく隣を見れば、真剣な顔つきであたしを見ているから、ドキリと心臓が跳ねる。
「高橋の髪って、地毛だよな?」
「う、うん。お母さん譲りで、生まれつきなの」
だいだいの人は、「染めてるの?」って聞いて来るのが当たり前だった。だけど、初めて地毛だと気がついたのは橘 奏だけ。だから、少し驚いてしまった。
「凄いな、一発で当てちゃった。学校の先生とか、周りの人からは染めてるだろうって良く言われるの」
笑いながら、冗談ぽく言った。小学校の時から、数え切れない程に先生や周りの人から言われ続けていた。
普通に聞いて来てくれる人はいいんだけど、明らかに悪意を込めて言ってくる人達が嫌い。
最初は凄く悲しかったけど、お母さん譲りの栗色の髪と瞳は好きだった。それに、周りが何を言っても、亮太達が髪を綺麗だって言ってくれたから気にしなかった。
すると何故か、橘 奏は不満げに口を開いた。
「なんで、みんなは気付かないんだろうな。誰がどう見ても、染めた色じゃないって分かるだろう」
不思議そうな表情で、あたしの髪を見続ける。こんなにも、近くで髪を見られた事なんて無いから、緊張をしてしまう。
「なんで、染めてないって分かったの?」
そう聞くと、橘 奏は真面目な表情で口を開いた。
「根拠は無いけど、染めた髪が、こんなにも綺麗な色をしているとは思えないんだ。
だから、地毛なんだなって」
躊躇いのない真っ直ぐな言葉に、カァァと頬が熱くなっていくのが分かる。一気に、体温が上昇していく。
それはとても嬉しくて、口説かれている様に思うのは、あたしの妄想だと分かっている。なのに、その言葉の一つ一つが嬉しくてたまらなかった。
「あ、ありがとう。そう言ってもらえて嬉しい!」
その言葉が嬉しくて、心を込めて感謝の気持ちを伝える。
「いや、その、俺は、思った事を、言っただけで……そのなんだ、どう致しまして」
何故か耳を真っ赤にして、カタゴトに話す橘 奏を可愛い。思わず、クスクスと笑った。
「……何が可笑しいんだ?」
あたしが笑っているのが気に入らないみたいで、少しムスっとしていじけている。だけど、今のあたしには、いじけた姿さえも可愛く見えてしまった。
クスクスと笑い続けていると、少し乱暴に頭を撫でられて髪が乱れる。
「何するの?!」
「高橋が、俺を見て笑うからだろう。これであいこな」
少し意地悪な声で言うのに、その手は何処か優しくて、胸の奥がぎゅっとなって切なくなる。
橘 奏の一つ一つの仕草や言葉で、ドキドキする。それは、あたしが橘 奏を恋愛感情で見ているから。
だけど、橘 奏はそんな感情であたしを見ていない。それに3歳年上だから、あたしの事を子供だと思って優しく接してくれる。
あたしだけが、意識をしているから余計に悲しい。そう思うと、また胸の奥がぎゅっとなって苦しくなった。

