外に出たあたし達は、無言のままブラブラと歩く。特に会話は無かったけど、とても居心地が良かった。
ふと地面を見ると、自分の影が長くなっているのに気がついて空を見上げる。空は、茜色に染まり、真っ赤に燃えている夕日があたし達を照らす。
時計を見ると、時間は午後6時。そろそろ家に帰らないといけないし、花束を買わないといけない。もともと、花束の為に街へ来たんだから。
「もう、6時か……。そろそろ帰るか?」
橘 奏は、モノクロをモチーフにした腕時計を見る。あたしは、慌ててある場所を指さした。
「あのね、あそこの花屋に行ってもいい?」
指を差した先は、あたし達が居る道路を挟んで反対側の歩道に建つ花屋。
あそこの花屋は、お母さんにとって思い出の場所。お母さんが小さい時から、花屋のおばさんに可愛がられていてお世話になっていた。
だけど、あたしが2歳になった頃に病気にかかって他界してしまった。大好きなおばさんは、居なくなってしまったけど、お母さんはあたしを連れて花屋に行った。
お母さんが死んでからは、花屋に行く機会はなくなった。だけど、お母さんの大好きな場所だから、誕生日の花は毎年ここで買う事にした。
「ああ。いいぞ」
感傷にふけている中、橘 奏の声が聞こえてきて慌てて現実に戻る。あたしは、「ありがとう」と笑顔で伝える。橘 奏の言葉に甘えて、花屋に向かった。
「ありがとうございました」
店員さんに見送られながら、冷房が効いた涼しい店内から外に出る。外に出た瞬間、ぶわっと生温い熱気と湿気が体を包み込んだ。
そして、外で待っていてくれた橘 奏の元に向かい歩き出す。
「綺麗な向日葵だな」
橘 奏は、あたしが両手で抱え持つ大きな向日葵の花束を優しい眼差しで見つめる。黄色い花びらが、太陽に当たってキラキラと輝き出す。
「そうだね」
お母さんは、昔から向日葵が好きで、毎年お父さんが母さんにプレゼントしていた。でも、お小遣いをもらえる歳になったあたしと音夜も、花束をプレゼントした。
すると、お母さんが、「みんなで、大きな向日葵をプレゼントしてくれたら嬉しいな」と言ってからは、3人で一つの花束を買うことになった。
「誰かに、あげるのか?」
「今日は、お母さんの誕生日だからあげるの」
「そうだったのか。お母さん喜ぶだろうな」
「うん。絶対に喜んでくれてると思う」
嬉しくなって、笑顔になる。早く、家に帰って渡したいな。
「反則だろ……」
何故か、橘 奏は顔を赤く染めて手の甲を口に当てていた。何か言っていたけど、聞き取れない。橘 奏の不思議な行動が気になったけど、先に聞きたい事があって話す。
「今日は、自転車で来たの?」
「いや、バスで来た」
「あたしも、バスで来たわ」
「じゃあ、途中まで一緒に帰るか」
その小さな偶然でも嬉しくて、コクコクと頷いた。

