ん?待って。さっきまで、ゲームしてたのに何であたしの前に居るの?
「え~と確か、橘 奏はゲームしてたよね?何で此処に居るの?」
記憶をたどりながら聞く。すると少し溜息をついて、いつもの仏頂面へと戻った。
「確かに、俺はさっきまでゲームをしてた。だけど、お前がベンチに座ってボーとしてたから此処に来た。で、声をかけようとしたらコレだ」
橘 奏は、顎を押さえ淡々とした口調で話す。あたしは、自分が何をしたのか理解したのと同時にサァーと血の気が引いていく。
「ごめんなさい……!」
あたしが立ち上がったせいで、前に立っていた橘 奏の顎にヒットしてしまった。端から見れば、あたしが頭突きした感じになってる。
まさか、橘 奏が居るとは思ってもみなかったから全力でぶつけてしまった。あたしが、橘 奏の立場だったら絶対に涙目になってたと思う。
しかも、橘 奏に気がつかなかったのは、変な考えごとをしていたせい。どうしよう!さっきから、こっちを凝視してるんだけど!怒られる……!
「楽しくないのか?」
予想外の言葉に、え?と驚いて声を漏らす。そして、言葉の意味を理解した。
あっ。そっか……。橘 奏から見て、あたしはつまらない表情をしてたのか。
「そんなことないわよ。橘 奏みたいに、ストライク出したくてどうやって投げているのか観察してたの」
言えない。橘 奏を目で追いかけて、橘 奏に対する変な感情に悩んでたなんて恥ずかしくて言えない!
すると、橘 奏は立つ位置へと向かい出す。そして、くるっとあたしの方に振り向くと不思議そうな表情で話す。
「何してるんだ?コツ教えて欲しいんだろう?」
「う、うん!」
あたしは急いで立つ位置に向かい、球に指を入れてスタンバイした。すると身長の高い橘 奏は、あたしの目線に合わせて体を屈める。そのせいで、互いの顔の距離が近くなって、心臓の鼓動がドクン、ドクンと速くなる。
「いいか。投げる時にホームを崩すな。ボウリングは、ホームが大事なんだ。体を軸にして、掌を真っ直ぐに----」
心臓の鼓動が、煩くて説明が聞こえない!落ち着いて心臓ーーッ!
「おい、聞いてるか?」
「へ?!え、え~と……ごめん。聞いてなかった」
心臓と葛藤していたせいで、聞いてなかったから素直に謝る。
「もう一回、説明するからちゃんと聞いとけよ?」
橘 奏は呆れた表情もしないで、もう一度説明をしてくれた。説明を受けたあたしは、意を決して球を投げた。球は、勢いよく直線上に転がり真ん中のピンに当たる。でも、ストライクにはならず2本残っていた。
「やった!今の見た?」
それでも、初めてたくさんのピンを倒せられたから嬉しくて興奮する。
「やったな」
橘 奏が笑うから、さらにあたしは嬉しくなった。その後も良い調子で投げ続ける事が出来た。ストライクを4回だす事が出来たのと同時にゲームが終了。もちろん、結果は橘 奏の勝ち。それでも楽しいゲームだった。

