君に幸せの唄を奏でよう。




ガラガラ……!


「わーー!凄い!」


橘 奏のストライクに、思わず立ち上がって拍手をする。今、あたし達はボーリングセンターに来ていた。


きっと橘 奏は、あたしを励まそうとして此処に連れてきてくれたんだと思う。


だからこそ、あたしも思いっきり楽しもう! って思ったけど、5回中3回は憎きガーターへと導かれてしまいスコアが伸びない。ピンを倒しても精々3本。


人生で2回目のボウリングは……とても難しい。1回目は、幼い頃家族で来ただけ。それに、亮太達ともした事がない。何を隠そうと、あたし達は筋金入りの音楽大好き人間。


あたし達が遊ぶ時は、カラオケに行ったり、浩ちゃんの家に行って演奏したりする。時々、好きなアーティストのライブDVDやPVを見て勉強したり、盛り上がったりしている。唯一、音楽に関わっていない遊びはTVゲームだけ。


本当に、音楽漬けの毎日。今思えば、高校生らしい遊びはしていない。だからこそ、こういゲームは苦手。


一方、橘 奏は宮木さんと草野さんでよく来ているみたいで、15回連続ストライクという更新を叩き出している。その結果、あたしのスコアと橘 奏のスコアの差が大きく開く。


でも、スコアの伸びなんて気にしなかった。それよりもあたしは、橘 奏を目で追うのに夢中になっていた。


さっき偶然にも、橘 奏の可愛い所を見つけた。ストライクが決まるたび嬉しそうな表情で小さくガッツポーズする。その姿が、少し幼く見えて可愛かった。


今まであたしは、冷静で歌を憎んでる橘 奏しか知らない。唯一、見たことがあるのはフっと小さく笑う姿だけ。だからこそ、楽しそうに笑っている笑顔がとてもレア。その姿を見て、胸がキュンとなる。


なんだか、今日のあたしは可笑しい。


こんなにも橘 奏のことを気にしてたっけ?それにいつもなら、ちょっとドキドキするだけなのに今日はドキドキしなっぱし。


後、佐藤先輩から助け出そうとして、手を繋いで連れ出してくれただけなのに手を離されて悲しくなった。


どうしちゃったんだろう、あたし……って、さっきから思考が良からぬ方向へと行ってるんだけど!


もう考えるのはやめよう。せっかく、連れて来てくれたんだから楽しまないと!


「ッ!!」


そう思ってベンチから立ち上がった瞬間、頭に何かが刺さったような痛みに襲われる。


原因を知るため頭を抑えて見上げた。すると何故か、顎を押さえて立っている橘 奏の姿があった。どうしたんだろうと思って見つめていたら、眉間に皺を寄せてあたしの頭に軽くチョップする。


「周り見てから動け。危ないだろう」


「ご、ごめん……??」


何が何だか分からず、とりあえずあたしのせいで痛い思いをしてる橘 奏に謝る。