君に幸せの唄を奏でよう。




「何こいつ。急に大人しくなったんだけど。きしょいんだけど」


あたしを掴んでいる先輩は、汚い物を見るような目をして嘲笑う。だけど、そのお陰でダランと力が抜けていた腕に力が戻る。


為す術がないからって、何を諦めようとしているの!真実が言えないからって負けちゃいけない。だから---!


「先輩達に誤解を招いてしまったのは、あたしが悪いです。ごめんなさい。だけど、これだけは信じてください。あたしは、佐藤先輩に好意を持っていませんし告白なんてされていません」


真実を言って助かるんじゃなくて、真実を守り抜く。そのせいで、罵倒をされても構わない。あたしは、何一つ間違った事をしてない。ただ、大切な友達を守りたいだけ。


それに、首を突っ込んだあの日から覚悟は出来ていた。もう、これはあたし自身の戦い。ケジメはちゃんと付けないといけない。


だから、これ以上誤解を招かないためにも言わなくちゃいけないことは言って、後は大人しくしておこう。


「はぁ?!あんた何様のつもりよ!」


先輩は、拳をつくってビュッと風を切って殴り掛かってきた。だけど、あたしはそれを避けずに静かに瞼を閉じる。


それで、先輩達の気が晴れるなら大人しくしていよう。少しの間、目を瞑れば終わる--。自分に言い聞かせている時、不思議と落ち着いていた。きっと、堂々と胸を張っているから怖いものなんてないだ。

だから大丈夫……って、思ってたら。


「やめろッ!」


突然、聞き覚えのある声があたしと先輩の間に割り込んできた。誰なのかを確認する為に瞼を開いたけど、ぐいっと腕を引っ張って、あたしを先輩から庇うように前に立つ。

助けてくれた相手の後ろ姿しか見えなかったけど、誰なのかはすぐに分かった。


「亮太?!何で此処に?!」


助けに来てくれた亮太に、驚愕して声を上げる。まさか、亮太が助けに来てくれるなんて思ってもみなかった。


凄く嬉しかったけど、それと同時に悲しくなる。


あたしを助けに来たせいで、亮太を巻き込んでしまった……。もう、無かった事にはできない。


「1年のくせに調子に乗って。あんた自分の立場分かってる?」


「佐藤くんに、告白されたからって調子にのるなよ!」


「なんで、お前みたいなブスが告られるんだよッ!」


だけど、先輩たちは亮太に守ってもらってるあたしが気にくわないのか、さらに皮肉を込めて言いたい放題に言う。