「気が変わったから、いいよ。高橋ちゃんに免じてやめてあげるよ。あいつには、俺から話し付けておくからさ」
そんな簡単に?!いや、もちろんその方が嬉しいんだけど……。
あまりにも佐藤先輩が、穏やかに微笑んで納得してくれたから、一瞬頭の中が混乱してしまった。だけど、その穏やかな微笑みはまるで嘘のように消えて、どす黒いオーラを放つ笑顔へと変った。
「その変わり、この事は誰にも言わないでね。もし言ったら、あいつに掛け合ってあげないし、高橋ちゃんの見えない所で、別の誰かに酷いイジメをしてもらうよ。これなら、誰も高橋ちゃんに協力できないね。
まぁ、仮に誰かに言ったとしても信じないと思うしね」
「最低……ッ!」
ただ、くく…と喉で笑う佐藤先輩を睨みつける事しかできなかった。
このままじゃあ、佐藤先輩の本性と万引き犯の事を誰にも言えない。この話に乗れば、あたしも共犯になる。卑怯者になる。
それに、今の話で西原くん達に協力してもらってた事がバレてる。ここで、この話を断れば、あたしの見えない所で浩ちゃんが傷つく……っ!
そんなのは嫌……ッ!だから、あたしは---。
「…分かりました。あたしも約束を守りますので、先輩も守って下さい」
「うん。いい子だね。俺も約束は守るよ。これは、2人だけの秘密だよ」
佐藤先輩の話に乗って、胸にモヤモヤとした罪悪感が残る。でも、これで浩ちゃんを守る事が出来たから良かった。ほっとして、胸をなで下ろす。
「それにしても、高橋ちゃんが初めてだよ。俺に刃向かった女の子わ。本当、正義感が強すぎてビックリしたよ。君みたいなタイプは、絶滅危惧種だね」
佐藤先輩は、頬づりをして感心した表情を向ける。そして、珍しい物を見ているかのような目をする。
あたしは珍獣かッ!
「あたしの何処が、絶滅危惧種なんですか?」
……なんて言えず、何故あたしが絶滅危惧種と呼ばれるのか理由が知りたくて質問をした。
「じゃあ質問だけど、西原たちから毎回高橋ちゃんが邪魔をしたって聞いてたんだけど、どうしてそんな事をしたの?」
「どうしてって……友達だからです。友達が傷つく姿なんて誰も見たくないです。理由なんてありません」
そう。理由なんていらない。大切な友達を助けたい。ただ、それだけ--。

