佐藤先輩は、声を張り上げたあたしを見て少し驚いた表情をした。だけど、それは一瞬ですぐにいつもの胡散臭い笑顔に戻った。
「って言われても、こっちにも借りがあるから断れないんだよね。あいつも必死なんだよ。岡田に顔を見られたんじゃないかってね」
「---!」
先輩の言葉を聞いて、ある事に気付いてしまい言葉を呑む。もし、万引きをした男が佐藤先輩の友達だとする。きっと、万引きをした男は焦ってるはず。浩ちゃんに顔を見られているんじゃないかって。
だけど、顔を見られている可能性があるから、直接浩ちゃんに手を出せない。だから、万引き犯は佐藤先輩に潰してもらうよう頼んだんだ……!
酷すぎる…。浩ちゃんは何も悪い事なんてしてないのに……!
「これでも、まだマシなんだよ?最初、あいつは仲間に頼んで岡田を半殺しにするのを、俺が止めてあげたんだよ?大事(おおごと)になったら面倒だしね。で、俺が岡田と同じ学校だって言ったら、代わりに半殺しにしてくれって言われたんだよ」
浩ちゃんに対して、罪悪感を抱くどころかニコニコとした表情で話し続ける。怒りの感情が暴れ出しそうになるけど、話を最後まで聞くため手を握り締めて耐える。
だけど佐藤先輩は、そんなのお構いなしに話し続ける。
「でも、俺って人気者じゃん?だから、その地位を汚す訳にはいかないんだよね。そこで考えたんだ。半殺しの代わりに、岡田をイジメるって。
イジメにしたら、精神的なダメージを与えられるから、引きこもってくれるかもしれないしね。そしたら、あいつは納得してくれた訳」
頭いいでしょ?と、言わんばかりのドヤ顔を向けられて、押さえ込んでた怒りの感情が一気に溢れ出した。
「最低ッ!どうして、そんな事を平気で出来るの?!浩ちゃんは何も悪くないのに!それに、何が地位を守るためよ…!西原くん達まで巻き込んで、この卑怯者ッ!」
悔しくて悔しくて、ただ大声で叫ぶ事しかできなかった。そして、何も気づけなかった自分を責めるように叫んだ。
そのせいで、2人しかいない静かな教室で、うるさいぐらいに自分の声が響き渡る。それに驚いて、目を大きく開けている佐藤先輩を無視して話し続ける。
「これ以上、浩ちゃんに何かしたら絶対に許さない!例え、佐藤先輩がイジメを続けようと万引き犯が半殺しにしようとしても、あたしが守るんだからッ!」
だから、これ以上好き勝手にはさせない。何があっても、佐藤先輩には負けない。向こうのいいようになっちゃいけない…!
「…はははははッ!」
突然、佐藤先輩はお腹を片手で抱え込み、もう片手で机をバンバンッ!と笑いながら叩き始めた。
人が真剣に言ってるのに笑って……ッ!バカにされているみたいで、悔しくて手を握り絞める。

