君に幸せの唄を奏でよう。




「あら、岡田くんじゃない!」


深刻に考えている時に、後ろから浩ちゃんを呼ぶ声が聞こえてきた。後ろに振り返ると、60歳ぐらいのおばさんが小走りをしながらこっちに向かって来る。


「この前は、ありがとうね。岡田くんが居なかったら、万引きされてたわ。あの時は、旦那も居なくて私一人だったから、本当に助かったわ」


おばさんは、浩ちゃんに感謝をしながら笑顔で言う。


「いえ。こちらこそすいません。捕まえることが出来なくて…」


そんなおばさんに対して、浩ちゃんは申し訳なさそうな表情で話しているのを見て、ようやく何の話をしているのかを理解した。


3週間前、おばさんが経営してるリサイクル店で、値段の高い商品を万引きしようとした男がいた。たまたまその場に居合わせていた浩ちゃんが、万引きをしている所を目撃して捕まえようとした。だけど、相手に振り払われてしまい逃がしてしまった。


商品は無事に戻ってきたけど、万引犯の顔は見えなかった。原因は、ぶかぶかのフードを被ってたせいで見えなかったらしい。手がかりとして、見た目が高校生ぐらいの人しか分からなかった。


万引き犯は捕まらなかったけど、その後日おばさんが学校に連絡をして、浩ちゃんは全校生徒の前で校長先生に褒められた。


「何言ってるんだい!岡田くんのお陰で、うちは助かったんだから!」


と言いながら、おばさんは責任を感じている浩ちゃんの背中を力一杯に叩いた。バシっと痛そうな音が聞こえたから、心配になって浩ちゃんの様子を伺う。案の定、苦笑いして痛みに堪えていた。


それから少し話をして、おばさんに手を振りながら別れを告げる。


「さすが浩ちゃん。正義感が強いね」


浩ちゃんの勇気ある行動に感心をする。


「そんな事ないよ。高橋の方が正義感が強いと思うよ」


「え?あたしは別に強くないよ」


浩ちゃんの言っている意味が分からず、思わず首を傾げてしまう。


「でも、高橋がそう思ってても、僕は強いと感じるよ」


浩ちゃんが優しく微笑みながら言ってるけど、やっぱり理解する事は出来なかった。


結局、疑問を残したまま浩ちゃんの家に向かう。