君に幸せの唄を奏でよう。



このまま苦手のままで良かったのに、西原くん達を脅して浩ちゃんをイジメさせようとして嫌いになった。だから、躊躇うこともなく佐藤先輩と言い合いが出来る。


でも、そんな所をファンクラブに見つかれば、一巻の終わり。変な誤解をされて全員から嫌われ、女子ならではの噂を流されたり、イチャもんをつけられるのが目に見えてる。


まぁでも…嫌われるのは慣れっ子だけどね。あたしはどちらか言うと、人に好かれないタイプ。特に、リーダー格の女子から嫌われて、それに怯えて周りの友達が居なくなる。


だから、嫌われる自分が悪いんだって、言い聞かせてきた。


でもそんな中、亮太はあたしと友達になってくれた。孤独だったあたしは救われた。独りぼっちじゃあなくなった。だけど浩ちゃんの場合、あたし達に出会うまでは、お金目当てで寄ってくる上辺の友達しかいなくて……。


ある事に気がつき、一瞬思考が停止したかのような感覚に襲われる。


もしかして、佐藤先輩は浩ちゃんがお金持ちだって知っているのかもしれない。浩ちゃんをイジメて、お金を持って来るように脅そうとしてるんだ…!


これで、やっと全てが結びついた。もう、同じ事で傷ついて欲しくない。何が何でも、あたしが浩ちゃんを守らないと……!


そして放課後。今日はバンドの練習をするんだけど、亮太と佳奈が委員会で遅くなるから、あたし達は練習場所としている浩ちゃんの家に向かう。


ふと、空を見上げる。秋になって、お昼の時間が短くなったせいで、夕日は眩しい光を放ちながら西に沈むのを急ぐ。いつも見ている光景なのに、初めて浩ちゃんと2人で帰るから神秘的な感じに思えた。


だけど、浩ちゃんに聞かないといけない事を思い出して、慌てて現実に戻る。亮太と佳奈には悪いけど、偶然にも2人きりになれた。今此処じゃないと聞けない!


「…ねぇ、あたし達の中学校で浩ちゃんがお金持ちだって知ってる人は居る?」


本人から、聞くのが一番だと思ったからストレートに聞く。あたしの質問に、浩ちゃんは目を大きく開いて驚いた表情をする。


「え?居ないと思うよ。僕だけが地元を離れて引っ越したからね。だから、同じ小学校の出身の人は居ないよ。僕の家の事を知っているのは、高橋たちだけだよ。それが、どうかしたの?」


「ううん、なんとなく…」


浩ちゃんが、不思議そうに首を傾げて聞いてきたからごまかした。動揺をしているのがバレないように、あたしは頑張って微笑む。だけど、浩ちゃんから見れば苦笑いをしているように見えてるかもしれない。


まさか、予想が外れるとは思ってもみなかった…。てっきり、佐藤先輩はお金持ち目当てで、浩ちゃんを標的にしてるんだと思った。じゃあ、佐藤先輩の本当の目的って何?