「俺らも良く分からないんだけど、佐藤先輩は岡田が嫌いだから、イジメてくれって頼まれたんだ。だけど、イジメたくないって言ったら、佐藤先輩が俺たちをイジメるって言って…。
そしたら、先輩がイジメられたくなければ、岡田 浩平の教科書を捨てろって言われて……」
男の子は苦しそうな表情で、小さな声を震わせながら話してくれた。もう一人の男の子も、彼と同じ表情をする。
「それで、教科書を捨てようとしたのね…」
「どうしても、先輩に逆らえなかったんだ…!本当に悪かった!」
もう一度、西原くんは頭を下げて謝る。 もし、西原くん達が喜んで浩ちゃんをイジメてたら怒るつもりだった。
だけど、佐藤先輩に無理矢理頼まれて、脅されて仕方なくやってしまった…。嫌だって言ってる人達を巻き込むなんて最低…。腹が立って拳を握りしめる。
それにしてもおかしい…。こんな事をして、佐藤先輩に得があるの?もし、そうだとしたら放っておくにはいかない。そして、西原くん達のためにも。
「お願いがあるの。もう、二度こんな事しないで。それと、また佐藤先輩が命令してきたら、高橋 唄に邪魔をされて失敗したって毎回伝えて欲しいの」
さすがの佐藤先輩でも、1日中西原くん達を見ていられないと思う。それに、あたしに視線が向けば、浩ちゃんへの嫌がらせが止むはず。
「だけど、そんなことしたらお前が…!」
西原くんが心配そうな表情で声をかけてくれたから、あたしは微笑み返した。
「平気よ。それともう一つ協力をして欲しいの」
あたしは、3人にお願いをした。内容を耳打ちで伝えると、西原くん達は困惑をしていたけど、戸惑いながら「協力をする」と言ってくれた。
「高橋、教科書ありがとう」
次の休み時間、浩ちゃんは笑顔であたし達の教室に来た。浩ちゃん右手を見ると、何故か理科の教科書をあたしの物を含めて2冊持っていた。
「あっ。それと、教科書見つかったよ」
教科書をあたし達に見せながら、嬉しそうに言う。
「よかったな。何処にあったんだ?」
自分の教科書が見つかって笑顔でいる浩ちゃんに、亮太は質問をする。

