君に幸せの唄を奏でよう。




「亮太、先に行ってて!」


「おい!何処に行くんだよ?!」


亮太の声を聞いても止まらず、西原くんの後を追いかけた。今日は、移動教室の日なのを忘れているんだと思ってた。


急いで、3人の後を追いかけると、校舎と体育館を繋ぐ屋根だけが付いている渡り廊下に着いた。渡り廊下は外にあるから壁が無く、秋風がビュービューと吹いていて、衣替えしたセーラー服でも肌寒い。


何故、わざわざ寒い中、渡り廊下に来たのか疑問を持った。それに、さっきから3人でコソコソとお互い耳打ちをしながら、唯一廊下に置いてあるゴミ箱に向かう。


西原くん達の様子がおかしい。様子を伺う為に、渡り廊下の入り口にある柱に隠れて、少しだけ顔を出す。


すると、知らない男の子の手には理科の教科書がある。それを西原くんともう一人の男の子は見つめて、何かを決心した表情でお互い頷く。そして、ゴミ箱に向かって投げ捨てようとした。


「何してるの?」


「高橋ッ?!なんで此処に?!」


止めに入ったあたしを見て、西原くんは驚いて声を上げ、後の2人は動きを止めた。


「…それ、誰の教科書?」


あたしの問いに誰も答えない。特に、西原くんはとても罰の悪そうな表情をしていて、あたしと目が合うと下に俯く。


西原くんの態度を見て、嫌な予感がした。教科書を持っている男の子から、教科書を取り上げる。教科書を裏返しにして、誰の名前かを確認する。案の定、丁寧な字で“岡田 浩平”と書かれていた。ショックを通り越して、怒りの感情が込み上げてきた。


「答えて。なんで、こんなことをしたの?」


3人を睨み付けながら尋ねる。あたしの問いに、3人は罰の悪そうな表情をする。


「「「ごめんッ!」」」


3人は頭を下げて、あたしに謝る。


「…た、頼まれたんだ!佐藤先輩に、岡田をイジメてくれってッ!悪いことだって分かってるけど、部活の先輩だから断り切れなくて!」


「どうして…?」


なんで、サッカー部に入ってる後輩に頼んだの?どうして、自分から直接しないの?