君に幸せの唄を奏でよう。




あれは、中1の10月頃、変な噂が流れていた。


“岡田 浩平は、佐藤先輩に嫌われている”その意味が分からず、何でだろ…?と考えた。


浩ちゃんは部活に入っていなし、サッカー部…ましてや佐藤先輩と関わりが無いはず。それに、亮太や佳奈から何も聞いてない。だから、デマだと信じていた。事件が起こるまでは……。


「高橋、亮太」


ある日、移動教室に行く準備をしてた時、少し慌てた表情で浩ちゃんが、あたし達のクラスに来た。


「どうしたの?大丈夫?」


少し息を切らしている浩ちゃんを見て、心配になった。よっぽど、何かを急いでいるんだと分かった。


「理科の教科書を持ってない?今日、理科室に行くから必要なんだ」


「いいよ。はい」


机から教科書を取り出して、浩ちゃんに渡す。浩ちゃんは「ありがとう」と一安心した表情をした。


「珍しいね。浩ちゃんが忘れ物するなんて」


あたしの言葉に続いて、亮太も「そうだな」と呟く。


「うん…。ロッカーに置いてあったんだけど、見当たらなくて。どこに置いたのかな…」


困った表情で、考え込む浩ちゃんを見て驚いた。几帳面な性格の浩ちゃんが物を無くした所など見たことがなかったから、今の光景がとても不思議。


「家にでもあるんじゃないか?」


「うーん…確かに、間違えて持って帰ったかもしれない。家で探してみるよ。じゃあ、また後で」


浩ちゃんはそう言い、手を振りながら理科室に向かった。


「じゃあ、俺等も行くか」


あたし達も移動教室に向かおうとした時、同じのクラスの西原くんと見たことのない男の子2人が、辺りをキョロキョロして何処かへ行くのが見えた。


でも、その方角は、移動教室と反対の方向。保健室に行く方向でもない。それに、なにか慌てているような感じがした。