君に幸せの唄を奏でよう。




「高橋と一緒に居た、あの男は元カレか?」


「えぇッ?!違うわ!てか、そんな雰囲気に見えたの?!」


声を上げながら、全力で否定をする。


「…お前に馴れ馴れしいかったから」


そう言って、橘 奏は物凄く不機嫌な表情をする。だけど、その表情は、拗ねている様に見えて、なんだか可愛かった。


でも、なんで拗ねているのか、見当が付かず首を傾げる。


「だから、お前とあの男を見かけた時に、付き合ってるんだと思った」


橘 奏は淡々とした表情で話し続ける。


そんなに風に見られていたとは…。ということは、絶対、周りの人もそんな風に見てたんだろうな…。もし、あそこにファンクラブの先輩たちが居たら、本当にややこしくなるところだった。本当に居なくて良かった…。


「だけど、高橋の嫌がってる声が聞こえたから、お前を助けた」


そう言って、真剣な眼差しをあたしに向ける。そして、胸がキュンとなる。


あたしは、いつも橘 奏に助けてもらってばかり。ナンパされた時だって、あたしを庇って逆上したナンパから怪我を負った時も。今日だって、佐藤先輩から助けてくれた。感謝をしきれない気持ちになる。


「本当に助けてくれてありがとう。だけど、あたしと先輩は、付き合ってないから。あんな最低な人とは付き合うなんて、ありえないし」


「なにかあったのか?」


しまった…!と後悔するのが遅かった。感情を抑えきれずに、つい話してしまった。


しかも、中途半端な事を言ってしまった。これじゃあ、あからさまに、何かありましたよって、アピールしてるみたいじゃない…。


「やっぱり、何かされたのか?」


「え、えぇと…」


だけど、これ以上、橘 奏を巻き込む訳にはいかないし…。どうしよ…。