「嘘だな。いつもより、元気がない。隠してても、バレバレだ」
「なんで…?」
思わず、声を上げる。そして、嘘をついた事を認めてしまった。上手く隠したのに、いとも簡単に見破られた。
だけど、橘 奏が聞いてきているのは、佐藤先輩の事。あたしが隠しているのは、胸に感じた痛み。
「嘘ついてごめん…。だけど、本当に何もないから」
絶対に言えない。だって、あたしが変なだけだもん…。
「本当にか?」
あたしの顔を覗き込んでくる橘 奏に、ドキンと心臓が跳ねる。また、心臓の鼓動が速くなって苦しい。
「~~っ!大丈夫だって!」
いつもよりも近い距離に耐えきれず、少し距離をあける。
「大丈夫じゃないだろ。顔が赤いぞ」
「こ、これは、日焼けで赤くなったのよ!ほ、ほら、紫外線は女の敵って言うじゃない!」
自分の顔を両手で隠して、必死にごまかす。
そんな、あたしを見て、橘 奏は「フッ」と、小さく笑う。
「なんで、そんなに必死なんだよ。変なの」
クスクスと小さく笑い続ける橘 奏の表情に、トクンと、心臓が跳ねる。
あたし…どうしちゃったんだろ。今までこんな風にならなかったのに…。
ぼーと考えていたら、視線を感じて現実に戻る。いつの間にか、橘 奏が真剣な表情で、こちらを見ていた。それに驚いて、ドキンと心臓が跳ねる。
「少し…聞いてもいいか?」
「う、うん」
ドキドキしている心臓の鼓動に耐えながら、戸惑いながらも小さく頷いた。

