「本当に純粋だね。今まで、汚れた女しか会ったことないからさぁ…。まぁ、俺も汚れてるから、人のこと言えないんだけどね」
先輩は、遠くを見つめる瞳で、感傷に浸った表情で話し続ける。その時、少し哀しい表情をしている様に見えた。
「でも、君が純粋で良かったよ。純粋だからこそ、君は君で居られるんだね」
「どういう意味ですか?」
どういう意味なのか気になり、理由が知りたくて質問をする。
「君は、汚れを知らないんだよ。逆に、汚れてる人は、自分が可愛いくて仕方ないから、周りに媚びを売って利用する。自分が捨てられないように。そして、いらない時は、平気で切り捨てる」
そう話している先輩の表情は、どこか寂しそうな表情をして俯いてしまった。
あたしは、純粋だとか汚れているとか、その境がイマイチ良く分かんないけど、先輩がそんな表情で話すって事は、誰かに利用されて傷ついたのかな?
「佐藤先輩、大丈夫ですか?」
そんな先輩を見て、思わず声をかけてしまった。返事が返ってこないから、心配になって少し近づいた瞬間。
「でも、君は残酷だね」
そう言われ、右手首を捕まれてしまった。振りほどこうとしたけど、ビクともせず、手首を掴んでいる手の力がさらに強められる。
先輩の雰囲気がガラリと変わり、氷のように冷たくなった。相変わらず、口元は笑っているのに、瞳が笑っていない。そんな先輩に、初めて恐怖心を抱いた。
「君の場合、純粋の鈍感で、おまけにお人好しだ。君は気付いていないと思うけど、周りに中途半端な態度を取ってる。早く気付かないと、いつか誰かを傷つけるよ?これは、俺からの親切な忠告だよ」
あたしの耳元で囁く先輩の言葉に、ゾクッと背中に悪寒が走る。

