「…そうね。お母さんを悲しませたらダメね。亮太、ありがとう」
落ち着きを取り戻した唄は、服の袖で涙を拭き取り、笑顔でお礼を言った。
「あたしの将来の夢はね、お母さんとの“約束”を果たすことなの」
「約束?」
「“歌手になって、周りの人達の為に、そして自分自身の為に歌ってほしい”って…」
だから、こだわっていたのか…。
唄の言葉を聞き、納得した。
「将来の夢は少し変わちゃったけど、あたしは亮太とバンドを組んで、皆を幸せにするヴォーカリストになる」
唄はブランコから立ち上がり、凛とした表情で夕日に向かった。
まるで、天国にいるお母さんに誓いを立てるかのように--。
唄の栗色の髪が、夕日に照らされ輝いていた。
あまりにも眩しくて、綺麗でその光景から目を離せなかった。
「俺もお前とバンドを組んで、いい曲も作れるようなベーシストになる」
唄の横に立ち、空を見ながら言った。
唄は、嬉しそうな笑顔で俺を見つめる。
「頑張ろうね!」
「おう!」
俺達は、ハイタッチをした。
これを機に、俺は音楽に対しての情熱がさらに熱くなった。
そして、唄を守ると誓った。

