君に幸せの唄を奏でよう。



「明日、皆さんは…」


先生が話をしているのに、頭に何も入ってこない。


昨日、唄に会った時は「大丈夫!」と笑顔で言っていたので、俺は安心をしていた。


本当は大丈夫じゃなかったのに、気付いてあげられなかった自分に腹を立てた。



次の日、唄たちのお母さんのお葬式に参加をした。


俺を含め、会場にいる人たちが真っ黒な服を着て行った。


会場には、唄にそっくりで優しく微笑んでいるお母さんの写真が綺麗に飾られていた。


お葬式が始まり、みんなは泣き出した。俺もたくさんたくさん泣いた。


だけど、俺たちよりも唄たちが一番ツラいのが分かっていたので、それを思うと涙は止まらなかった。



それから、唄は学校を休んだ。


クラスには気まずい雰囲気が漂っていたが、3日後にはいつも通りに戻っていた。


俺は、ただ唄の席を眺めていた。


電話をしようと思ったが、どんな言葉をかけてあげればいいのか分からず、電話ができなかった。


唯一、俺が出来るのは唄の家のポストに宿題を届けること。


また何も出来ない自分が、腹立たしいかった。