「…悪い。“また今度”話す」
「え…?」
高橋は、驚いた顔で俺を見ていた。
は?俺、今なんて言った…?
「あ…何言ってるんだ俺…。悪い、忘れてくれ」
無意識に、言ってしまった。
これじゃあ、まるで俺が高橋に助けを求めているみたいじゃないか。
格好悪いな、俺…。
「…待ってるから」
「え…?」
「橘 奏が話してくれるまで、あたし待つから」
高橋は、俺を真っ直ぐな瞳(め)で見ながら言った。
「お前…」
「唄ー!そろそろ帰るぞーー!」
高橋の友達が、高橋を呼んでいた。
「分かった!じゃあね!」
高橋は、俺に笑顔で言った。
「あ、ああ…。またな」
俺は、高橋に微笑みながら言った。
理由は分からないが、高橋に話して気が楽になった。
不思議な奴だな、あいつは……。
友達の所に向かう、小さな背中を見送りながら思った。
『“自分の首を自分で絞めるな”』
だけど、先輩に言われた言葉は未だに分からず、頭の中でぐるぐる廻っていた。