「…それに、中学の時にいろいろあっただろ?あの時も泣く所を見てないんだ」
「…僕も見たことない」
「だから、俺は勘違いをしていたんだ。あいつは“強い”って。
あいつは、強いんじゃない。“我慢”してただけなんだ」
早く気付けばよかったんだ。今頃、気付くなんて…。
ただ、俺の中に後悔だけが残っていた。
「うん…。僕もそう思う。今思えば、あの時の僕たちは、なにもしてあげられなかったね」
浩平が、申し訳なさそうな顔をしながら言ってきた。
「…そうだな。あの時といい、今回といい…なにやってんだろ。俺は…」
自分自身に呆れて、物も言えない。
「…だからこそ、今の僕たちに出来ることは、
来月のライブが出来るように早くケガを治す事だと思う」
「…そうだな。早く治さないとな…。よし、帰るか」
「うん」
俺たちは、店を出た。
「唄のやつ大丈夫かな…」
「大丈夫だよ。橘さんもいるんだし」
「やっぱ、あの人に頼るしかないのか…」
それが、悔しい。
「今回は、仕方ないよ」
浩平が、慰めて言ってくれているのが分かった。
「…そうだな」
いつまで、うじうじしてるんだろ…俺は。
俺は、あの時の唄の表情にが気になっていた。
病院で、唄と橘さんがメアド交換してた時、今まで見たことのない表情をしていた。
橘さんとメアド交換した後、嬉しそうな顔をしていた。
付き合いが長い俺さえも見たことのない表情だった…
もしかして、唄は橘さんの事が…
「どうした?ぼーとして」
浩平が不思議そうに聞いてきた。
「…なんでもない。後で、唄にメールで謝っとく」
「うん。それがいいと思うよ」
もう、考えるのはやめよう。俺が虚しくなるだけだ…。
…とりあえず、早くケガを治そう。
俺達は、家に向かった。

