「今日、橘さんの所に行くの?」
「うん」
昼休み。あたし達は、いつもの様に教室でお弁当を食べる。
あれから3日経つ。この前の件は、学校側には注意を受けただけで済んだから、厳しい処分にならなかった。
今、橘 奏は自宅治療で大事にしている。そして今日は、橘 奏にお見舞いに行く。
「なぁ、唄」
「なに?」
何故か、不安そうな表情で亮太が聞いてきた。
「俺たちも見舞いに行った方がいいんじゃないか?」
「「僕も(私も)そう思う」」
亮太達は、少し気まずそうな表情で話す。
「あたし1人で大丈夫よ。それに、大人数で来なくていいって言われたし」
多分、橘 奏は亮太達に気を遣って言ってくれたんだと思う。だからこそ、あたしが代表して行くべき。
「それに2人は、まずケガを治さないと。ケガしているのに、お見舞いに行ったらお互い気まずいじゃない」
「そうだね…」
「そう…だな…」
何故か亮太だけは、納得が出来ないという表情をしていた。
「じゃあ、私はいいよね?」
「佳奈は、橘 奏にケガをさせたわけじゃないし」
「でも…!」
佳奈は、申し訳なさそうな顔をしていた。
「それに、橘 奏のご両親にちゃんと言わないといけない事があるし」
責められるのは、あたし1人でいい。
「…分かった」
佳奈は、やっと納得してくれた。
「ごちそうさま」
亮太は、弁当箱を片付け、突然立ち上がる。
「どこに行くの?」
亮太の様子が少しおかしいので、あたしは心配になって亮太に聞く。
「……委員会で、呼ばれているから行ってくる」
何故か、亮太は素っ気なく答え、教室を出て行く。
「浩ちゃん。なんで、亮太は機嫌が悪いの?」
あたしは、浩ちゃんに聞いた。
「…いろいろ悩んでいるんだと思うよ。しばらくは、そっとしといてあげよう」
浩ちゃんの言った意味が分からず首を傾げた。あたしは、ただ亮太のいない席を見つめた。