「お疲れ様でした」
「では、失礼します」
俺たちは、店長に挨拶をし店を出た。
外で待たせていた、タクシーに乗り込んだ。
「いい店長さんね」
「うん。あの人は、根っからいい人なんだ」
母さんが、微笑みながら聞いてきたので答えた。
俺は、携帯で時間を見た。
もう、0時だった。1日立つのが、早いな……。
今日起きた出来事が、ものすごく昔だったように感じた。
俺は、縫った所を触りながら考えた。
あいつを庇う時、このまま死んでもいいと思った。
この際、腕がダメになってもいいと思った。
そうすれば、“諦めがつくから…。”
だけど、
『…ぅ…グスっ…ご、ごめんなさい…っ』
あいつは、泣きながら謝ってきた。
いや、正確に言えば、俺が泣かしたんだ。
--お前は、悪くない。俺が、悪いんだ。
『手術が終わっても…グスっ…痛いに…グスっ…決まってるじゃないっ!』
俺が、“大丈夫”って言っても俺を心配して言ってきた。
--これは、自業自得なんだ。お前が、泣かなくてもいいんだ……。
だから、俺はあいつの頭を撫でたんだ。
でも、結局は自己満足だ。
あいつの友達にも迷惑をかけた。もちろん、母さんにも……。
だけど、心のどこかで“この程度で済んでよかった”と、思う自分もいた。
俺は、まだ断ち切れないのか?
こんなにも拒否しているのに……!
けれど、反面よかったと思う部分があった。
もし、このまま死んでたら、あいつらや母さんをもっと泣かせていたな…。
なにがしたいんだよ、俺は----。
考えている内に頭の中がごちゃごちゃになってきた。
…考えるのは、もうやめよう。
俺は、考えるのをやめて、瞼(まぶた)を静かに閉じた。