「…お前たちの気持ちは嬉しいが、
もう、夜の11時なんだぞ?高校生にしては時間が遅すぎる」
橘 奏が、少し怒りながら言ってきた。
あたし達は、黙って聞くことしか出来なかった。
橘 奏の言っていることが正しいから…。
「それに、俺はお前らより大人なんだ。年上の言うことは聞け」
橘 奏の言い方は少しきついが、あたし達のために言ってくれているのが分かった。
「…分かった。あたし達も帰る」
「ああ。そうした方がいい。迎えに来てくれるんだろ?」
「うん」
亮太たちの治療を待っている間に、お父さんにメールをしたので、迎えに来てくれる。
あたし達は、病院を出た。
あ…。お父さんの車だ。
でも、橘 奏はまだ迎えに来てもらってないわよね……。
あたしは、橘 奏の方を見ながら思った。
「…心配するな。ちゃんと迎えが来るから」
橘 奏は、あたしに言ってきた。
しかし、何故か罰の悪そうな顔をしていた。
「迎え来てるんだろ?帰りな」
「…じゃあ、先に帰るわね。また今度、お見舞いに行くから」
「…分かった」
気になったが、聞いても“なんでもない”と言われるのが、分かっていたので聞かなかった。
それに今日は、おとなしく帰ったほうがいいと思った。
「先に帰るわね。みんな、また学校で」
「おう。またな」
「またね」
「また」
みんなに、手を振りながら言った。
「…じゃあ、また」
「ああ。またな」
あたしは橘 奏に言い、お父さんの待つ車に向かった。

