君に幸せの唄を奏でよう。



【亮太 Side】


あの人の手術が終わるまで、俺らは待っていた。


俺らは、唄と相原の飲み物を買うため自販機に来た。


「俺らって、弱いな……。あの人が助けに来てくれなかったら

こんな軽傷で済まなかっただろうな」


自販機のボタンを押しながら言った。


「そうだね……」


浩平も買った飲み物を取りながら、言った。


「自分で強いとは思っていなかったけど、ここまで弱いとは、思わなかった…」


俺も飲み物を取りだしながら言った。


「…本当は、あの時、すぐ警察を呼べばよかったのに…

好きな奴の前でカッコつけたくて…結局、このざまだ…」


逆に、唄たちを傷つけ心配させた。


さっき、治療室から出たときに泣きそうな顔をしていた。


「…亮太だけが悪いんじゃないよ」


「え…?」


俺は、少し驚いて浩平を見た。


「…僕も亮太と同じ気持ちだったし…」


俺と同じ…気持ち…?


「え…浩平、お前-」


「早く、相原たちの所に戻ろう」


俺の言葉を聞かず、浩平は先に行った。


また、今度聞いてみるか……。


俺は、唄たちの所に向かった。


「高橋、相原」


浩平が2人に言った。


「唄、これ」


俺は、水を渡しながら言った。


「こんな状況で、渡すのもあれだけど…少し飲んだら落ち着くと思う」


俺が、こんな事を言う資格はないけど…。


「……ありがとう」


唄は、水を少し飲んだ。


「落ち着いたか?」


俺は、唄に聞いた。


「…うん」


「よかった」


唄が、少し落ち着いたのを見て安心した。唄の隣に座った。


唄は 、手術室のドアを見つめていた。


その表情は、思い詰めた顔だった。


傍にいても、なにもしてやれない。


情けねぇ…………。


手術が成功するのを祈る事しか出来ない自分が、惨(みじ)めだった。