君に幸せの唄を奏でよう。




橘 奏の手術から、20分経った。



「あたしのせいだ…。あたしが、あの時、避けれなかったから…」



ただ、待つことしか出来ない自分が悔しかった。



「唄ちゃん、自分を責めないで…」



佳奈が、心配そうに言ってきた。



「でもね、あたしが怪我しなかったから、あいつが傷ついたの…」



「唄ちゃん…」



あたしが言った途端、佳奈が悲しそうな顔をした。



「ごめん。八つ当たりして…」



なにやってるのよ、あたし。


佳奈は、あたしに気を遣って言ってくれたのに…。



「ううん。私こそ、無神経でごめんね…」



「そんなことないわよ…」


気まずい沈黙が流れる。



「高橋、相原」



自販機に行っていた浩ちゃん達が、戻ってきた。



「はい、相原」


浩ちゃんは、お茶を佳奈に渡しながら言った。



「ありがと」



佳奈は、そう言いながら受け取った。



「唄、これ」


自販機に言ってた亮太が、あたしに水を渡しながら言ってきた。



「こんな状況で、渡すのもあれだけど…少し飲んだら落ち着くと思う」



「……ありがとう」



あたしは、亮太の気遣いが嬉しかった。



水を少し飲み、落ち着いた。



「落ち着いたか?」



亮太が、あたしに聞いてきた。



「…うん」


「よかった」


亮太は、あたしの隣に座りながら言った。



浩ちゃんも佳奈の隣りに座った。



あたしは、手術室のドアを見つめた。



ただ、何も出来ず時間が経つのが、つらい。



あたしは、手術室の赤の点滅が消えるのを見ながら、手術が無事に終わるのを祈った。




「………っ!」


赤の点滅が消えたので、とっさに、あたしは立ち上がった。



ドクン、ドクン----。


緊張して心臓が高鳴っていた。