君に幸せの唄を奏でよう。




「きゃっ!」

あたしは、誰かに背中を押されてこけた

慌てて目を開けると、橘 奏の背中が見えた。

何故か、腕を押さえながらあたしの前に立っていた。

なんで、あたし怪我してないの……?

まさか……ッ!!

あたしは、橘 奏を見た。

橘 奏の足元に赤い点が、いくつも出来ているのが暗くても分かった。

よく見ると、橘 奏の腕から血が出ていた。

「橘 奏ーーーーーーッ!!」
「はははッ!!ざまぁーーみろッ!!」

男は、笑いながら言ってきた。

あたしが、油断したから、橘 奏が庇(かば)って怪我を……。

相手は、ナイフを持ってるから絶対に勝てない。

どうしよ……あたしの…あたしのせいだ……

「…っ……逃げろ」

突然、橘 奏が言ってきた。

「な…何言ってるのよッ!怪我してるあんたを置いて逃げられないわよッ!!」

ただでさえ、あたしのせいで巻き込まれてるのに……!

「……大丈夫だ。俺がこいつを引き留める」

大丈夫っていう顔してないじゃない……。

「引き留めるだぁーー?自分の状況を分かっていないようだな」

男は、あたし達にわざとナイフを見せながら皮肉に言ってきた。

「これで、終わりだぁーーッ!」

男は、橘 奏に向かいながら言ってきた。

「やめてーーーーッ!!」

あたしは叫びながら、橘 奏の前に出た。

もう、誰も傷つけたくない……!

あたしは、震える体に言い聞かせた。

ウーーーーーーッ!

突然、パトカーのサイレンが聞こえた。サイレンの音は、かなり近い。

2台のパトカーが、サイレンを鳴らしながら、こっちに向かってきた。

4人の警官がパトカーから下りてきた。


「動くなッ!警察だ」


警官は、男に拳銃を向けながら警告した。