聞いていると頷くだけで、はっきりと返事をしないザイに、女は眉をひそめた。
「………狩人は昔と違ってちゃんと会話が出来るんでしょう?…相槌じゃなくて声を出しなさいよ、声!…恥ずかしがり屋なの?図体が大きいだけの小心者なの?何なのよ!」
これが、質の悪いただの夢だったらいいのに。
…内心、ザイはひそかにそう呟いた。
寡黙を維持する自分の態度が気に食わないらしい、このうるさい女に、ザイは頬杖を突きながら無表情で「…聞こえている」と、低い声で呟いた。
「…あらそう。あたし、狩人を見るのも会うのも生まれて初めてなの。…無口だとは知らなかったけど……ま、とにかく会話が出来て良かったわ。遅くなってしまったけど、礼を言うわ。さっきはありがとう」
「………」
「………本っ当に、無口なのね。…別にいいけど。………ところで…助けてもらって難だけど…一つだけお願いがあるのだけど…」
不機嫌そうなしかめっ面から突然真剣な表情を浮かべ、声のトーンを落とす女。
お願いがあるなどと…。…内容なら聞かずとも分かる。
ザイはその場でゆっくりと腰を上げた。見上げてくる女から目を背け、外の吹雪の勢いを気にかける。
「………外は、もう暗い。…吹雪は案外弱まっているようだ。………今夜中も雪がこのままの勢いであれば、大した量は積もらないだろう。………充分歩ける。………夜明け前にでも出れば…」
………すぐに街に着くだろう。
そう言葉を続けようとしたザイだったが……女の甲高い罵声が断ち切った。
「違うわ!」
「………違う?」
怪訝な表情で見下ろすザイに、女は深く頷いた。
「街に送って行ってほしい訳じゃないのよ。………むしろ、逆よ。あたしを未踏の地に連れてってちょうだい」


