街に近寄ることさえも避けるザイだが、今回は別だった。
………数日前に発生した『嵐』による爆発で、ここ一帯の山の地形が、部分的だが…変わっていた。
爆発によって丘が削り取られ、大きく口を開いた谷の幅が増していた。…加えて大量の木々が倒れているせいで、酷く足場が悪い。
先に進むには、面倒だが、迂回するしかない。どうせなら、足場の悪くない、街の近くを通る方がいい。
……商人などに出くわすかもしれないが。
真上を見上げると、粉雪が下りてくる薄ぐらい天には影が射し始めていた。
…今は昼が短く、夜が長い時期。
…日暮れ時だ。空はあっという間に暗くなるだろう。
…視界が明るい内に、さっさと迂回してしまおう。
あまり気は進まなかったが、それでも仕方ないと割り切ってザイは街のある方向へと進路を変えた。
…深い森林から抜けると、小綺麗に整備された一本の細い道に出た。
街から街への道として切り開かれた、獣道とは訳が違う人工の道だ。
この真っ白な道を、荷車を引いた商人がよく利用しているのを見掛ける。
…凹凸、高低の激しい山道と違い、整備されているだけあってさすがに歩きやすかった。
歩いても歩いても平面な地面が続く。
周囲を見回せば、森林の向こうに街を囲む高い壁がちらりと見えた。
すぐに目を逸らし、ザイは足早に道を進んで行く。
…だが。
ザイの足は、不意に歩みを止めた。
道の真ん中でピタリと制止し、直立不動を維持するザイ。
…おもむろにフードを外し、数秒間前を見据え………何を思ったのか、歩きやすかった快適な道から外れ、脇の暗い森林に音も無く飛び込んだ。


