あまり好きではない、街という別世界にも思える空間から抜けると、待っていたのは常に自分と共にあり、寄り添う過酷な銀世界だった。
吹き付ける吹雪の冷たさを肌に感じながら、ザイは前へ足を踏み出した。
左右へ、前後へと靡くマント。その内に覗くのは、幾つもの、金属の鈍い光。
この重みが、己を守る術であり、己自身であり………戦士であることの、誇り。
…自分に、家などない。止まる場所など無い。止まり木など、存在しない。
誰もいない所で、誰も来ない所で、誰も…自分の事を知らない所で。
そんな事を望むかの様に、ザイは旅をする。
独り、ただ独りで、旅をする。
永遠に、飛び続ける。
…コムがいた街から離れて、二、三日経った頃。
ザイは、何処まで行っても続く、純白で塗り潰された森林の中を歩いていた。
ザイの頭の中には、この広いデイファレトの地図が刻まれている。今自分がどの辺りにいて、どの方向に、あとどれくらい歩けば何があるのか、全て分かっていた。
…背の高い木々の群れで、何処を見回しても先に何があるのか分からないが、今現在いる地点から少し歩いた所に街があることを、ザイは知っていた。
普通の街より、少し大きな街だ。
…一度も出入りしたことはないが、人口も多く、中には貴族もいるという話だ。
…今のところ、コムの店に寄って買った携帯食料も足りている。水もある。特に立ち寄る必要性は無いだろう。
金になる仕事は無いかと狩人のほとんどは街に入るが、ザイは…別だ。
たとえ仕事でも、街の民と関わる事を好まない。


