一年か二年程前だろうか。
街の民の中から、貧困から抜け出したいがために暴挙に走る輩が出て来ていた。
彼等は集団となって一つの群れとなり、街から街へと渡り歩く商人を狙って強盗、殺人を犯しているという。
そしてそれは、最初に比べて大胆になってきていた。
誰もが敬意を払う貴族にさえも、彼等は刃を向ける様になったらしい。
…近頃は、貴族の人間を人質に大金を要求するという騒動が頻繁に起きている。
故に、その凶暴な賊退治の依頼が首都辺りに限らずあちこちで出回っている。
…報酬はなかなか高額だ。その額に釣られて依頼を受ける狩人も多いが、多くは返り討ちに合っている。
つい最近判明した事実だが、賊の数は十数人から五十数人と多いという。
元は戦闘術も何も知らない街の民という素人集団でも、依頼を受けてやって来る狩人の対策は出来ている筈だ。…いくら戦いに長けた狩人でも、単身でこれに挑むのは自殺行為に等しい。
コム曰く、アオイはその依頼を受けようとしているらしい。
「…お前さんはどうじゃ?受けるつもりはないのか?…報酬の額もどんどん高くなってきておるぞ」
「………興味が無いな。…双方とも好きな様に、勝手にするがいいだろう………無駄な戦いだ。出来れば、関わりたくないものだな…」
「…そうかい。………まぁ、天下のザイロング様に言わせればそんなものじゃな………カカカッ、睨むな睨むな」
…個人的な事をネタにからかってくるコムを一睨みすると、ザイは木箱から腰を上げた。
腰と背中の剣を確認し、白いマントを羽織り直す。
「………今度は何処にお出かけかい?」
「………東にでも。………当ての無い旅だ」


