亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~



他の狩人達と違ってあまり依頼を受けないザイは、はっきり言って一日中暇を持て余している。
この広い雪国、デイファレト中を当ても無く流浪する孤独な狩人。

そんなザイも、不意に孤独から抜け出したくなる時がある。その度に、このコムという老人の元を訪れるのだ。
もしくは、ただ気が向いた時。







愛用の長い煙管で骨張った肩を叩きながら、コムは片手で木箱の一つを持ち上げて商売道具の整理をし始める。
木箱はかなり重い筈なのだが、老人の顔は実に涼しげだ。


「…知り合いも何も……お前さんと同じ、わしの常連客さ。………ちょくちょくわしの店の場所を嗅ぎ付けて来るぞ、アオイは。………お前さん達が今まで鉢合わせにならなかったのが、不思議なくらいじゃ」

「………」



黙り込むザイに、カカカッ、と肩を震わせてコムは笑った。

「………アオイはその辺の狩人とは、ちいっとばかし違うからの。…フフッ…奴に関わったら最後、お前さんの静かな日々も、何かとうるさくなるぞ。覚悟しておくのじゃな」

「…既にうるさい。ここに来るまで、ずっと隣で一人喋っていた。………やっと撒いたところだ」


いつまで経ってもついて来るアオイに、とうとう痺れを切らしたザイは、「………見ろ。犬が空を飛んでいる」と上空を指差して呟き、空へとアオイの意識が向いた途端………ザイは逃亡を謀った。

我ながら、なかなかすんなりと上手くいったと思っている。




「…アオイの事だ。お前さんの腕を見込んで、儲かる仕事をしないかとでも言ったんじゃろう。……ま、誘いたくもなるわい。…最近は、確かに儲かるが………危険なものが多いからの…」

「………………風の噂では聞いている。……………『賊退治』の依頼だろう?」