亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~



…有名人。

まぁ、顔は知らずともザイロングと名乗った時点で、狩人ならばあっという間に自分が何者か分かるだろうが………その有名人と分かっていながら、このアオイとやらは何故こうも絡んでくるのか。


…訳が、分からない。




「………変な男だな。…近頃は、危険な依頼が多い。よく見定めてから受けることだな………よくよく気をつけろ」

「若気の至りってやつだよ、分からないかね…このスリルを味わいたい感覚。17歳はそういう年頃なんだよ」

「…分からんな。私も同じ歳だが」

「ハハハ!同じ歳って冗談言うなよザイロングさん。……………………え、本当に?」




















しわだらけの目元に収まった二つの眼球は、避けられぬ老いによってだいぶ衰えてはいたものの、鷹の目の如き鋭さと鈍い光は健在だ。

何を企んでいるのか分からない狡猾そうな笑みも、いつ見ても変わらない。
…死は万人に訪れるものだが、時々、この老人は死なないのではないか…とさえ思う。


普通の狩人に輪をかけて人付き合いの悪すぎる自分には珍しく、この老人とは十年以上の長い付き合いになる。
その辺の他人よりも彼と語り合う方が、数倍も有意義に思える。


………何と言うか、一匹狼同士、変な所で気が合うのだ。

この、コムとかいう怪しげな老人とは。





「……アオイ?………ああ、お前さん…奴と会ったのか」

「…知り合いか?」

小さなランプが一つ灯っているだけの、薄暗い室内。…室内と言っても、すぐに組み立てられるテントである。
街から街へ頻繁に移動する商人のコムの住居は、いつでも作れる携帯住居なのだ。

テント内の面積の半分以上を、何が入っているのか分からない大小の木箱が占領しており、ザイはその積み重なった木箱の上に腰掛けていた。