…この受けた依頼と同じ依頼が別にあったらしく、別の狩人と同時刻に同じ場所で鉢合わせになったが………今は、この偶然の鉢合わせに心底感謝している。
………この仕事、一人ではとてもじゃないが……無理だ。
…二人で良かった。
(………と言っても………二人でも危ない感じだがな…)
………幾つかの白い影が雪に隠れながら背後に回り込むのを横目に、小さく舌打ちをした。
………何匹に、囲まれているのだろう。
狩人である自分の五感とは、こんなにも頼りないものだっただろうか。
…うっかり超音波と同じ脅威を持つブロッディの遠吠えを、もろに聞いてしまってから…どうも耳がおかしい。
…最悪だ。三半規管が馬鹿になったらしい。
身体がフラフラとあちこちに傾くし、視界は揺れたり霞んだり。洗いざらい吐いてしまえと、意味も無く胃が吐き気を与えてくる。
…吐いても、胃液しか出て来ないだろうが。
狩人にしか分からない合図で馬鹿みたいに、先手はお前が行け…!と無言の言い合いをしている内に、ギラリと光るブロッディの目玉はぐるりと二人を囲んでいた。
…こうなると、もう先手どころの話ではない。
一斉にではなく、一匹ずつ飛び掛かって来てくれるならとても有り難いが、それはまず有り得ないだろう。
そんな良心的な襲い方をする獣など、聞いたこともない。
接近戦では用の無い長い弓をギュッと握り締め、携帯しやすい元の大きさにまで縮めると、腰の剣を抜きながらゆっくりと構えた。
……離れた場所にいる仲間の男も、ほぼ同時に低く屈んで臨戦体勢に入る。
右へ左へと視線を流せばそこらじゅうに…何とも見えにくいブロッディの姿が確認出来る。
だが、その姿をより鮮明に瞳が映そうとすると、まだまともではない感覚で見る視界はぐらりと揺れる。


