綿雪にでもなったような、ふわふわと浮いている様な…雲の様に浮かんでいる様な………曖昧な感覚。
現実と眠りの世界の境界線まで来た時は、いつもこんな感覚が身体を襲う。
あまりにも心地良くて、温かくて……。
………起きるのが億劫なのは、ここから引き戻されて不快だからだ。
ああ、眠い。
とっても眠い。
フワフワと浮いた自意識が、無気力な世界に手を伸ばす。
掴む物なんて何も無いけど、何でもいいや。
何でもいい。
どうでもよくなる。
―――何も無い世界にゆっくりと手を伸ばし…。
―――…………ただ夢中で、夢中で…。
―――………掴んだ。
―――反射的に。
「………」
「―――」
レトとザイはほぼ同時に目を覚まし、マントの内の剣を掴んでいた。
………互いに無言で目配せし、レトは中央で未だ燃え続ける炎を消し、ザイはすぐに剣を鞘から抜いて洞窟の壁に寄った。
………洞窟の丸い口から見える外は、相変わらずの猛吹雪。
飽きることを知らない風の歌しか、聞こえない。
しかし二人は岩影に身を潜め、外の様子を窺った。
「………何が聞こえたか、言ってみなさい…」
「………………何か…獣の鳴き声と……人の、声………」
「………距離は…?」
「……………………………五百メートル…?」
「……………もっと耳を澄ませろ。……一キロ先だ…」
ザイはレトの頭を軽く叩いた。


