大昔と違って、狩人も言語や文字の文化を持ち、街の民とも言葉を交わせる様になった。
会話が出来るだけでも、世間での狩人の位置は人並みになったと思う。
…字を書ける者は極僅かだが。
しかしそれでも尚、街の民から注がれる視線は軽蔑を帯びている冷たいものばかりで、狩人は変わっていても街の民の態度は何一つ変わっていなかった。
………それがこれからも続く不動の狩人の位置、もはや伝統にまで化していく変わらぬ態度であるならば………それも仕方ないと思う。
元々、両者は同じ国に住んでいても異端の者同士と認識しあっていたのだ。今更どうこうする気も無いし、改善策などある訳も無ければ誰も提案しないだろう。
……とにかく、今も、これからも…狩人と街の民は、絶縁を維持するだろう。
会話をする必要は無い。親しくする必要も無い。
…下らない仕事で金銭を貰えれば、それでいいのだ。
街の民からの仕事は、非常に下らない。
嫌な事は、全部狩人に押し付けるのだから、嫌になる。
「―――…そっちに行ったぞ!」
勢いよくフードを外して顔を上げれば、羽毛に似た大きめの綿雪が、視界いっぱいに広がった。
毎日の悪天候もそれに伴う視界の悪さも、生まれた時から見慣れたもので、見飽きたもの。
銀世界を駆けるのも、極寒を全身に浴びるのも、殺気を放つのも、慣れすぎたものばかり。
握り締めた弓を厚い積雪に立て、杖代わりにして立ち上がり、息を整えた。
白い吐息が邪魔だ。
視界が更に悪くなる。
周りを囲む敵の姿が見えないではないか。


