―――…繰り返し繰り返し。











歩く度に積雪に深々と減り込んでいた靴底は…。







…その途端、雪に隠れて見えなかった急角度の崖の縁を、踏んだ。




ズルリ…と、重力と体重に雪の滑りが加わり、疲労が蓄積された重い身体が一瞬で傾く。

遥か下方の暗い崖の口からは、高低周波の不協和音が鳴り響く風の吐息が漏れ出ており、足を滑らせた自分をまるで歓迎しているかの様だった。

…雪に塗れて、一気に滑り落ちる身体。
あっという間に落下…という寸前。咄嗟に鞘から抜いた剣を、崖の縁に突き刺した。





剣一本が命綱の、宙ブラ状態。


…頭上から、吹雪に混じって自分を呼ぶ切羽詰まった声が聞こえた。

その声に応える様に、直ぐさま崖の縁を掴み、両腕の力のみで地上に這い上がった。





















「―――…大丈夫ですか…?…こんなに真っ暗なんですから…足元もろくに見えません。………それに…何処かで少し休んだ方が…」







「………心配は、要りません。それよりも、一刻も早く…先に進まねば。………………サリッサ殿…急ぐのです…」






「………はい…」




























人気も無い。獣の気配さえも無い。

生気自体が感じられない、何処もかしこも真っ白な………針山地帯。

天に向かって、いびつながらも鋭い切っ先を伸ばす純白の円錐の群れが、永遠に続く大地。
さらけ出された鍾乳洞の様な北の世界は、森と隣接しているが、ここだけが切って貼付けた様な別世界に思えた。


あちらこちらに洞窟らしき穴が多々見えるが、入れば最後、二度と外には出られないと聞いている。