―――吹雪きが一段と激しくなってきた。
すぐ前にいる父の背中以外、他に目を凝らしてもあるのはうっすらとした暗闇だ。世界を完全に覆ってしまう夜は、近い。
「………日が傾いてきたな…。……………………今日はこの辺りでいいだろう」
……森の中にある崖下に、ポッカリと口を開けた洞窟を見つけた。
………真っ暗闇のその口に石を投げたり、叫んだりして、危険が無いか充分に確認した。
「………何もいない…みたいだよ。……………でもこの穴って『白の神』の巣だよね…………大丈夫かな…」
「………今はまだ産卵前の時期だ。この巣穴に帰って来るのはまだ先だろう………大丈夫だ。入るぞ」
足場の悪い洞窟に入り、少し奥まで行った所で、ザイは小さなランプを灯した。
……ぼんやりと淡い光が洞窟内を照らす。
………洞窟はやや狭く、ずっと奥まで続いていた。
……『白の神』という獣は産卵後、自分の縄張りに戻って子供のために長い狩りをする。どこまでも続く洞窟内を這いずり回って移動するのだ。
…その非常に人畜有害な時期以外なら、この巣はただの洞穴だ。
油を染み込ませた特赦な布を取り出し、丸め込んで火打ち石で火を点けた。
…たいして大きくもない火の側に二人は腰掛け、じっとその赤色を見詰めた。
袋からボロボロの擦り切れた毛布を取り出し、父に見せると、「お前が被りなさい」と小声で言われた。
………黙って毛布を被り、身体を縮こませた。
………二人には当たり前の、いつもの、存在だけを感じる沈黙が流れた。


