…この寒さにじっとしていられないユノは、室内をひたすらグルグルと歩き回り意味も無く足踏みをし、部屋の隅で横になっているドールからは不機嫌な声で「うるさい」と一喝された。
結局、元居た冷たい椅子に腰掛け………やはり結局、リストとイブを正面から睨む…と、振り出しに戻った。イブはいつの間にか居眠りモードに入っていたため、少年の恨めしげな眼差しを受け止めるのはリストしかいない。
…嫌なら流してしまえばいいのだが、変に律儀なリストには残念ながら、それが出来ない。
無言で視線を合わせてくるリストに、ユノは心の叫びをぶつけた。
「…寒い…物凄く寒いっ…!」
「何で睨むんだよ。今俺を睨む必要、絶対に無いだろ。そうだろ」
「…体温上げるとか、狡い。………下げてよ!!下げて―!王子命令!!」
「無駄に職権乱用!?…そんなもの聞いてたまるか!王子命令だろうが何だろうがな、俺が素直に言うことを聞くのは陛下以外の誰でも無…」
「―――た・だ・い・まぁ~」
「「おおおうぉぉっ!?」」
年上年下、身分の上下など関係無しに喚き合う二人の口論の最中。
何の音も気配も予兆も無く、第三者の気の抜けた声が割り込んできたと同時に………二人のすぐ傍らの壁から、笑顔を浮かべたノアの頭が出て来た。
能天気な生首が突如壁から生えた事に、当然ながら度肝を抜かれた二人。
そんな可哀相な彼等を余所に、ノアは穴など何処にも空いていない厚い壁を擦り抜けて室内に入って来た。
………髪の長い長身の、にこやかな笑みを浮かべた人物が壁の向こうから突撃訪問してきた。…にゅるんっ、と。
部屋に入る時はすぐに入らず、ノックをしてから…というマナーの域を軽く越えた、真似出来ない入室の仕方である。
「…ドアから入って来い!!壁から来るな壁から!!」


