この雪国の空は、いつ見上げても厚い雪雲が幅を利かせた、何とも不機嫌そうな表情を浮かべている。
旅人の使う方位磁石代わりの星も、月も、何も見えないが。
自分の様な、人並み外れた獣と同等の五感を持つ者ならば………感覚で、分かる。
今現在…月は夜空を昇り、朝の訪れを迎えるために、だいぶ移動している。
もうすぐ、夜更けだ。
極寒の冷え冷えとした空気も、時間が経つにつれその厳しさを増している。
吐く息も、数時間前より白くなっている気がする。
………とにもかくにも、寒い。
この寒さ、どうにかしてほしい。
あまり防寒着としての役割を果たせていないマントを羽織りながらも、芯から冷え切った身体を摩るユノ。
テーブルを挟んだ向かい側の凍り付いた椅子に、始終無言で腰掛けている二人を…じっと凝視していた。
その内の一人である固定された仏頂面の男…リストと目が合った。
合ったら合ったで、変わらぬ沈黙が続く。
…微動だにしないリストと、その隣で頬杖を突いたままボーッと足元を見下ろしているイブの二人の様子に、ユノは眉をひそめる。
「……ねぇ…寒くないの…?」
自分と同じ様に寒々としたこの室内で白い息を吐く二人だが、寒がっている素振りも見せていなければ居眠りまでしている始末である。
立場は一緒だというのに、この差は何だろうか。
怪訝な表情でじっと自分達を見てくるユノに、リストはパチパチと数回瞬きを繰り返した。
「……あ?………ああ…今は寒くないな。…体温、上げたから」
「………体温……上げ…?」
………言っている意味が分からない。上がった、ではなく…上げたから?………文法の間違いではないだろうか。
それとも…その言葉通り、体温を上げたのか。


