亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~



怖ず怖ずと聞いてみたレトの問いに……ノアは、満面の笑みを浮かべた。

目の前のそれは、仮面ではなかった。








「………好き、どころではありませんよ。…見た途端ハッとしました。………本当に…前王の幼き頃のお姿に瓜二つで……先程私の前に立たれた時は、思わず頬擦りするところでした。いや、危なかった…」


ユノは前王に余程そっくりだったのだろうか。感激のあまり抱きしめて、幼児をあやす様に持ち上げて高い高ーい…とするところだったらしい。
どうにか怒らせて突き放してよかった、とノアは溜め息を吐いていた。



「………そう。…彼が王になれば、私はお約束の展開通り…彼に異常な忠誠を誓う事でしょう。………切り替えの早い、生き物ですよ。……そんな自分が悲しくもあり、情けなく………怖い、ですね…。………もう…王なんて…要らないのに…」

…語尾を濁して、ノアは
踵を返そうとした。



………が、ノアの身体は、それ以上動く事は出来なかった。
ふと見下ろせば…小さな手が、自分の長い髪の束を掴んでいるではないか。
掴まれた髪から幼い手…そしてその先へと視線を辿っていくと…。








「………お願い…そんな事………言わないで…」

不安と悲しみに揺らいだ紺色の瞳が、そこにはあった。
レトはノアを見詰めたまま、掴んだ緑の髪を更に引っ張る。








「………王様…要らないなんて言わないで。…ユノには…言わないで。………ユノ…頑張ってるんだ………王様にならないといけないって…頑張ってきたんだ。凄く頑張ってきたんだ。………だから………そんな事、言わないで…」




…今にも温い涙が目尻に溜まり、流れ落ちそうな潤んだ大きな瞳。…このまま放っておけば、少年は泣いてしまうだろう。