亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~





………ノアにはかつて、唯一無二の主が存在した。


魔の者であるノアは、我が主というその存在に恋をした。

子供の様に純粋な、無色の恋。人間の様な、本能から駆られる肉欲など一切無い………想いだけの、恋心。

忠誠という名の、一途な恋。


この方が、私の主。何にも代えられない、掛け替えのない私の主。
私の、宝物。

私がお仕えする、私だけの主。


その姿を見ているだけで、私は幸せ。

私の名を呼んでくれるだけで、私は幸せ。

私を頼ってくれる事が、私の生きる意味。





私の、幸せそのもの。












………だけど。
…いつだったか。






















私の宝物は、私の前で真っ赤な血をお吐きになられて。

………泣いている私が見ている最中で。
























「…逝ってしまわれましたね。…私を残して。とても、悲しかった。ずっと泣きました。朝も昼も夜も泣きました。………ですが……新しい王を迎えると同時に、暮れていた筈の私の悲しみは、嘘の様に消え去り………私はまた、神の意思通りに………次なる王に恋をしました。その次も、また次も。…私は………私が嫌いです。大嫌い」





浮かぶ表情は笑顔だけれど、それはただの仮面。見上げるレトの目には、暗い影を落として悲しげに笑うノアの姿が見える様だった。




また、恋をする。愛しい人が死んでも、また恋をする。その繰り返し。

悲しみを忘れて恋をする自分が、大嫌い。





レトは、小さく首を傾げた。ノアをじっと凝視したまま、口を開く。






「………………次に王になるユノも、好き?」