………ノアにはかつて、唯一無二の主が存在した。
魔の者であるノアは、我が主というその存在に恋をした。
子供の様に純粋な、無色の恋。人間の様な、本能から駆られる肉欲など一切無い………想いだけの、恋心。
忠誠という名の、一途な恋。
この方が、私の主。何にも代えられない、掛け替えのない私の主。
私の、宝物。
私がお仕えする、私だけの主。
その姿を見ているだけで、私は幸せ。
私の名を呼んでくれるだけで、私は幸せ。
私を頼ってくれる事が、私の生きる意味。
私の、幸せそのもの。
………だけど。
…いつだったか。
私の宝物は、私の前で真っ赤な血をお吐きになられて。
………泣いている私が見ている最中で。
「…逝ってしまわれましたね。…私を残して。とても、悲しかった。ずっと泣きました。朝も昼も夜も泣きました。………ですが……新しい王を迎えると同時に、暮れていた筈の私の悲しみは、嘘の様に消え去り………私はまた、神の意思通りに………次なる王に恋をしました。その次も、また次も。…私は………私が嫌いです。大嫌い」
浮かぶ表情は笑顔だけれど、それはただの仮面。見上げるレトの目には、暗い影を落として悲しげに笑うノアの姿が見える様だった。
また、恋をする。愛しい人が死んでも、また恋をする。その繰り返し。
悲しみを忘れて恋をする自分が、大嫌い。
レトは、小さく首を傾げた。ノアをじっと凝視したまま、口を開く。
「………………次に王になるユノも、好き?」


