「貴方は、魔の者という生き物がどんなものなのかご存知ですか?」
「………………あんまり…知らない…」
「お勉強しましょうか。少々マニアックな分野ですが」
…何故かレト相手では、おふざけ無しでまともに話をし始めたノア。相変わらず前を向いたまま歩き続けているが、ノアの話を聞くためにレトはその背中を追い掛け続ける。
終わりの無い暗い廊下を、長短の二つの人影がゆっくりと過ぎって行った。
「…我々魔の者は、終生王族に仕えることを宿命とされた…人間にとっては誠に便利な生き物です。…我々にその拒否権は一切無く、神から定められた主にただただ従うのみ。我々も、王族も………パートナーを選ぶ事は出来ないのです。…王が悪人であろうが……弱い魔の者であろうが……互いに互いのパートナーを変える事は出来ないのです。………この、いつ崩壊してもおかしくない危なっかしい関係の均衡を保っているのは………何だと思いますか?…狩人よ」
「………」
どんなに主が最低な人間でも、どんなに最弱で頼りない魔の者でも、切っても切れない二つの関係は大昔から今まで…そのまま保たれている。
………大昔、何処かの王様が自分の魔の者を殺害したという話は聞いたことがあるけれど……その逆のパターンは聞いたことがない。
だとすれば……この二つの関係の均衡は、主至上主義の魔の者に何かあるのではないだろうか。
………王という存在には敵意を向けられないと聞くし…。
………しばらく黙って考えに耽っていたレトは、少し不安げな様子でノアの問いに小声で答えた。
「………仕えている主への……忠誠…心…?」


