………そう言うと、ノアはピタリと動きを止めた。
微笑は浮かんだまま。だがレトには、それが貼り付けた表情にしか見えなかった。
「………今も、そう。………何で笑ってるの………ノア…」
…レトは、首を傾げたままノアを見詰め続けた。
見上げた先の動かぬ笑みは、少年の真っ直ぐな視線に自らの視線を交じり合わせ…。
「私が、悲しそう?…ハハハッ、狩人如きが一体何を吐かすかと思えば。…だから私は、狩人という生き物が少々苦手なのですよ。無駄に純粋で、世の中の汚れを知らなくて…そして……………………………………………人の裏表も、心も、何でも、見透かしてしまう……ああ、貴方には見えますか?………私の、仮面ではなく…情けない顔が………」
ノアは、レトの視線の高さに合わせる様にその場で屈み込んだ。
目と鼻の先に、美しい模様が浮かんだ魔の者特有の緑の瞳がある。
血の気が無い程色白のきめ細かい肌と長い睫毛、線の細い輪郭に形の良い唇……とにかく、眉目秀麗としか言いようが無い容姿が、レトの瞳に鮮明に映った。
…貼り付けた微笑はやはりそのまま。
覗き込む様にこちらを見詰めてくるノアに、レトは無表情で口を開いた。
「………ノアは…ユノが嫌いなの…?」
「いいえ」
「………じゃあどうして……そんなに悲しそうなの?」
「嫌いになれる筈がないから………悲しいのですよ、狩人の幼子よ…」
…一瞬、笑みを引っ込めたかと思いきや、レトの頭をガシガシと撫でて立ち上がった。
そしてそのまま…ノアは廊下の先へと再び歩を進め始めた。
…レトは、無言でその後ろについて行く。


