亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~



「…ふ…ふざけるのも大概にしろ!そんなに人を怒らせて楽しいのか!………僕が…誰だか分かって…!」

「ええ、勿論存じておりますとも。敬愛なる、我等が幼き次の王~様」

「………なっ…」

全てお見通しと言わんばかりに満面の笑みを浮かべ、揚げ句ユノの頭をやや乱暴にガシガシと撫で付けるノア。
…ユノはカッとなってノアの手を叩こうとしたが、振り下ろされたその手は虚しく空を過ぎった。

華麗な動きでひらりとユノの手を躱したノアは、腹を抱えて笑いながら少年二人の頭上へと舞い上がった。

何も無い宙に、ノアは重力を無視してふわりふわりと浮いている。
長い緑の髪が、風も無いのにゆっくりと靡いていた。
………高い天井を背景に、シャンデリアと同じ高さの位置で浮かんで笑っているノア。


その摩訶不思議な光景に、レトは、わぁ…と目を輝かせて見上げていたが、隣で憤慨するユノは頭上のノアに向かって喚き立てた。



「………っ…下りて来い!……何だよ…何様なんだよ!!………僕が何者か分かってて…!…………このっ…変人!道化!無礼者!!」


…と、怒鳴るや否や、ユノは踵を返して元来た道をズカズカと歩いて行った。
…相当頭にきているのか、レトが呼んでも返事は無かった。



「………ユノ…迷っちゃうよ…」

「ずっと一本道だったから迷わない!!」


方向感覚の狂う、空間が歪んだ城内。
迷わずに帰れるのか分からないが、そんな心配など放り投げ、ユノはそのまま立ち去ってしまった。

…小さくなっていく彼の背中を追い掛けようとも思ったが………レトはあえてその場に残った。