気分屋のノアだが、気が向いて自分達を入れた訳ではないだろう。
全てを拒むノアが拒まなかったのには、何等かの理由がある筈だ。
…だが、待てどもその後ろ姿から返事は無い。
更に歩みを速めるユノにレトは直ぐさま追い付き、あからさまに不機嫌なユノに小声で耳打ちした。
「……ユノ…怒ってるの?」
「…当然。あー…苛々するよ。………話したと思ったら御託ばっかり並べて、肝心な事に関しては無視だ。………それに考えてもみなよ。…僕が王になったら必然的に………こいつが、僕の魔の者…付き人になるんだよ?」
………必ず王族には、魔の者が一人、仕えるというのがこの世の掟だ。
歴代のデイファレト王にこのノアが仕えてきたのなら、ユノの場合も自然、ノアが付き人となるだろう。
………それは別にいいのだが…そのノアの軽々しい態度が、人一倍自尊心の高いユノにはやはり不服の様だ。
何の反応も見せないノアに痺れを切らしたユノは、ノアを一気に追い越して前に立ち塞がった。
半ば睨み付けるユノを前に、やむなく急停止するノア。中性的で端正な顔には、人を小馬鹿にしたような笑みがにんまりと浮かぶ。
「急に私の前に立たないで下さい。小さいから踏んでしまうところでした。アハハ、これは失敬。ほーら笑って下さいな。なけなしの幸せが逃げてしまいますよ~」
やだー、子供って可愛いですね―…とか何とか言いながら、苛立つユノの両頬を摘んで引っ張るノア。
…この魔の者は人を怒らせるのが好きなのだろうか。
…途端、ユノは無言で入れ墨だらけのノアの手を力任せに払った。
怒気を露わにし、相変わらず笑顔のノアを見上げる。


