大理石の床をサラサラと滑るその光景は、まるでエメラルドの川が流れている様で、とても綺麗だった。
触れてみたくて、思わず手を伸ばしたくなる程だが、笑顔で叩かれそうだから我慢した。
前をのんびりとした足取りで歩く、すらりとした長身の後ろ姿を眺めながら、何処までも続いていそうな暗い廊下の真ん中を歩いていた。
視界の中心に映る、緑の長い長い髪が軽やかに揺れている。ずっと見ていると、その鮮やかな緑色に吸い込まれてしまいそうな感覚まで覚えてきた。
…遠ざかるエメラルドを追い掛けながら、ぼんやりと見詰めていると………何度聞いても男なのか女なのか判別出来ない中性的な声が、多分…自分達に向けて投げ掛けられた。
「ついて来るのは勝手ですが、私の髪を間違っても踏まないで下さいよ」
「………踏まないでって……床、引きずっているじゃないか…」
「それとこれとは別です。引きずるのは構いません。ただ、踏まれるのはとても不愉快です」
「………変なの」
踏まれるのが嫌なら、いっそのこと短く切ってしまえばいいのに…と、隣に並んで歩きながら小声で悪態を吐くユノ。
…確かに、双方の歩みがどちらか速度を変えれば、この長い髪を踏んでしまうかもしれない。
…これだけ長いのだ。過去、何度も何度も踏まれた経験があるのではないだろうか。
何処に向かっているのか知らないが、風に身を任せる木の葉の様にふらふらと歩くノアに、特に理由も無くついて行くレトとユノ。


