外野がぼんやりと眺めている中で、ノアの微笑混じりの“でこピン”は、放たれた。
細いノアの指先が空気を弾いて………リストの額を、小突いた。
「十年ちょっとしか生きてない坊やのくせに、私を質問攻めだなんて千年くらい早いですよ。………知りたがりやの、お・ま・せ・さーん」
―――ボシュッ。
………『ボシュッ』?
でこピンで生じる音とは考えにくい、否、出る筈の無い変な衝撃音が鳴り響いた途端、ノアの前にリストの姿は無かった。
彼は………その足元で、卒倒していた。ピクリとも動かない彼の姿はまるで、人形の様で…。
イブは瀕死状態、虫の息状態で倒れているリストに直ぐさま駆け寄り、不動の彼をじっと観察した後………目を輝かせながらノアを見上げた。
「…凄い!!リストがでこピン一つで死んだ!!何か指が当たる瞬間、火が見えた!!でこから煙が立ってる!!凄い!!な、何て技!?今の何て技!?」
「『必殺・私の華麗な指の前では跪ずけ。ロイヤル昇天でこピンスラッシュ』」
「必殺!!私の華麗な指の前ではひ………とにかく凄い!!凄いスラッシュ!!」
「期間限定」
「期間限定!?」
―――…何だろう、これは。
騒がしい大人達を、子供は溜め息を吐きながら無表情で眺めていた。


